サイエンス・フィールド

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アカデミック面接でよくある質問・育志賞ポスドク助教面接体験談

 

はじめに

日本国内のアカデミック業界において教授にたどり着くまでには、ポスドク助教→(講師)→准教授→教授というように、基本的には職位を徐々にランクアップしていく。多くの面接を経験しなければならない割に、企業の面接マニュアル的なもののように情報が多いわけではないように思う。特に、ポスドク助教といった比較的若手の時期には経験も少ないため、いかに事前に情報を収集しているかが結果を大きく左右する場合も多い。

筆者はこれまでに大きな面接として、育志賞の面接1回、ポスドクの面接2回、助教の面接1回を受けてきた。決して多くはないが、これら面接の内容を紹介し、それらの経験の中で共通してよく聞かれた質問事項や面接官が何を聞きたがっていると感じたかなどの印象を伝えられればと思う。

ちなみに、筆者は自然科学分野の基礎研究を行なっている。デバイスや材料を作成するといった応用寄りなものというより、物性や機能解明を目的とした物質科学系の基礎研究を行なっている。それを踏まえて読んでいただければ、質問内容の意図も理解してもらえるのではないかと思う。

 

実際の面接内容

育志賞

  • 提出書類:履歴書、これまでの研究概要(A4サイズ2ページ)、推薦書(3通)
  • 面接内容:これまでの研究概要と今後の抱負
  • 時間:発表7分、質疑応答18分
  • 面接形式:対面
  • 面接官の専門性:理工系
  • 結果:不合格

育志賞は学生が応募できる賞で受賞できれば約100万円の賞金がもらえる。書類選考の段階では学会もしくは大学からの推薦が必要。学会推薦では学会で発表賞などを受賞できていると推薦してもらえる可能性が高まる。大学の推薦は「大学名 育志賞」等で検索すれば、どの部局に問い合わせれば良いのかわかる。指導教員等申請者の専門を理解している人物だけではなく、学会もしくは大学からの推薦書も必要になる。詳しく知りたい方はweb検索をしてみて欲しい。

面接に関しては、二週間程度事前にA4サイズ1ページのレジュメ及び面接資料(スライド)を提出する必要があった。発表時間は短く、ほとんどが質疑応答であった。質問内容としては「研究発表の中で、この部分は実際にあなたが出したアイデアですか」、「指導教官から独立してやったと言える部分はどこですか」、「応用とかはどんなものがあるのでしょうか」、「世界中であなたのやり方でしかできない部分はありますか」、「類似研究もいろいろあると思いますが、そのなかであなたの研究の位置付けは」といったものがあり、その他に専門的・自分の研究に対する個別的な質問が数件あった。基本的には、自分がどの部分に主体的に取り組んだのかということを中心に聞かれた印象であった。

専門的な質問に対して的外れな内容を1分くらいだらだらと回答したのち、「いやそうではなくて聞きたいのは、、、」というようなやりとりがあり、おそらくそこが致命傷で不合格になった。今後の抱負の部分についてはほとんどコメントはなかった。

ちなみに、面接会場は日本学術振興会ビルで、学生にはありがたいことに交通費は支給していただいた。

 

某研究所ポスドク

  • 提出書類:履歴書、これまでの研究概要(A4サイズ1ページ)、研究計画(A4サイズ5ページ)、推薦書(2通)
  • 面接内容:研究計画
  • 時間:発表9分、質疑応答10分
  • 面接形式:対面
  • 面接官の専門性:科研費の大区分程度
  • 結果:選考辞退

受け入れ研究室を指定することで自由に応募できる某研究所のポスドクポジション。面接官は科研費の大区分でくくられた中区分程度からそれぞれ1名ずつで構成され、研究所内部2人、外部2人の計4人程度の他に、事務員2人が面接会場にいた。

質問内容としては「研究計画の実験のどの部分が難しいのですか」、「その基礎現象を理解したとして、実際にデバイスなどとして応用はできるのでしょうか」、「その研究の将来性はどんなものがありますか」、「若いうちにもっと海外とかいっとかなくていいんですか」ということを聞かれた。あまり専門的な内容は聞かれなかった。

質疑応答もうまく答えられ、ほぼ合格できていたとは思うが、選考結果を待っている間に海外留学先の内定(書類選考で済んだのでここでは触れない)が決まったため、速やかに選考辞退を申し出た。

 

某研究所ポスドク

  • 提出書類:履歴書、これまでの研究概要(A4サイズ1ページ)、研究計画(A4サイズ5ページ)、推薦書(2通)
  • 面接内容:研究計画
  • 時間:発表9分、質疑応答9分
  • 面接形式:オンライン(Zoom)
  • 面接官の専門性:科研費の大区分程度
  • 結果:合格

コロナの影響により、はじめてのオンライン面接。事前接続テストなども行なってもらった。発表時間の5-10分前に待機室に入室しておけば、相手側にもそれが伝わるということで、10分前に入室し待機していた。実際は開始予定時刻の2、3分後に開始された。オンライン面接とはいえ、一応上下ともスーツを着ておいた。面接官は、研究所内部2〜3人、外部2人の計5人程度の他に、事務員1〜2人がいた。

質問内容としては「研究計画の実験のどの部分があなたのオリジナルで新しいのですか」、「研究所には装置はあるでしょうが、グループの中で優先的に使わせてくれるのでしょうか」ということの他に、数件専門的なことを聞かれた。質疑応答時間は3、4分超過する程度にいろいろ聞かれたが、特に答えられない部分もなく、無事に合格通知をいただいた。後日、助教相当ポジションに内定をいただいたので辞退。

 

某研究所助教相当

  • 提出書類:履歴書、これまでの研究概要と研究計画(A4サイズ3ページ)
  • 面接内容:これまでの研究概要とこれからの研究計画
  • 時間:発表20分、質疑応答20分
  • 面接形式:オンライン(Zoom)
  • 面接官の専門性:科研費の中区分程度
  • 結果:合格

助教相当の選考では、ポジション毎に選考委員のようなものを組織し、人事担当の先生の他に、そのポジションに見合った専門性をある程度持ち合わせている者が選考委員になることが多いように思う。筆者の場合、人事担当者1人、グループリーダー1人、専門分野の類似した者2人、外部1人、部局長相当1人であった。事務員も1〜2人いた。

当日は5分前にZoomに入室し待機していたが、開始時間1分後に少しお待ちくださいとチャットで告げられ、その後10分程度待っていた。後日話を聞いたところ、選考委員の一部で回線に不具合があったらしい。オンライン面接は既に経験済みで、開始時間が遅れることもよくあると理解していたので、そこまで緊張したりあせったりしたりせず待機することができた。

質問内容はほとんど専門的なもので、一般的な質問としては「グループのリーダーとあなたの専門性で差別化できる点はなんですか」、「あなたの発表を聞いていて、私としてはこういう課題とかもいいと思ったし、挑戦もして欲しいんですけど、何かアイデアとかありますか」、「専門性は似ているといっても実際は新しい経験も多くあると思うが、抱負などがあれば教えてください」といったことを聞かれた。これからの研究計画の内容についてはほとんどコメントはなかった。強いて言えば専門に拘らずもっと他のこともやってくださいという感じのコメントをいただき、それに対してはそこまで上手く答えられた感触はなかった。しかし、専門的な質問は割と上手く答えられていた感触で、後日無事内定通知をいただいた。

 

さいごに

これら個別のケースを通して、全体的にポスドク助教といった比較的若手が応募するポジションの面接に関しては、次のような項目を判断したいという意図を含んだ質問が多いような印象を受けた。

  • 応募者の将来性
  • 応募者の主体性
  • 応募者の強み・オリジナリティ

予算獲得の申請書などでもよく聞かれる内容で、普段からこういったことを考えながら研究していれば、割と答えられないこともないように思う。面接テクニック的な記事を書いておいてなんだが、やはり普段から真摯に研究に取り組むことが最も効果的な面接対策になると思う。