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令和時代において研究留学を勧める5つの理由

 

 

はじめに

みなさんは研究留学といえばどのようなメリットを想像するでしょうか。多くの人は「外国人と繋がりを持てる」、「異文化への理解が深まる」、「英語力が伸びる」といったこと等がぱっと頭に浮かぶのではないでしょうか。

昨今では通信技術も発達しており、自宅にいてもインターネットを用いて世界中の人々と簡単にコミュニケーションを取ることができる時代になりました。インターネット上の論文に簡単にアクセスできるだけではなく、ブログ記事やtwitterを通して、個人が発信するフレッシュな情報を収集し、交流することができます。このような時代において、海外留学をしてわざわざ環境を変えてまで研究を行わなくても、外国人と繋がりを持ったり、異文化と交流したり、英語力を身につけたりすることは、日本に居続けてもできるように思えます。

しかし、実際に現地に赴き、数ヶ月、あるいは数年単位で活動を行うことでしか得られないような恩恵もあります。この記事では筆者が実際に留学を経験して感じた、令和時代において研究留学を勧める5つの理由を解説していきます。

 

研究留学を勧める5つの理由

1. やらざるを得ない環境に身を置くことができる

実際にインターネットを通じてコミュニケーションを取ることができるからといって、定期的にコミュニケーションをとり続けることは、時間がある人でないとなかなか難しいと思います。特に研究遂行を目的として日々を過ごしていると、何か他の目標を立てようとも、なかなか時間が足りなくなりがちです。研究留学を行うと、研究を遂行するために現地人と交流しながらやっていかなければならないため、無理矢理にでも多国語を使用し、外国人とコミュニケーションを取らざるを得ません。こういったやらざるを得ない環境に身を置くことができるのは研究留学のメリットの一つです。

 

2. 専門誌の編集者と繋がりを持てる

有名な専門雑誌を出版している国に留学することは大きなアドバンテージになります。例えばアメリカでは、生物系ではCellのCell Press、化学系ではJournal of the American Chemical SocietyのACS、物理系ではPhysical Review LettersのAPSといった出版グループがあります。他にも、イギリスであればNature姉妹誌等、研究先進国は大抵有名専門誌を取り扱っています。こういった専門誌の編集者リストを見ると、その国の研究者が大きな割合を占めていることがわかります。研究先進国の有名大学にはそういった専門誌の編集者が多くいますし、あるいは将来的にそういったポジションにつきそうな同僚もたくさんいます。こういう人々と繋がりを持っていると、それらジャーナルに論文を投稿する際有利になるでしょう。

 

3. 世界中に強いネットワークを構築することができる

有名大学には世界中から優秀な留学生が集まってきます。そういった人々が同じ環境で研究を行い、将来各々の国へ帰って研究者になることで、自然と世界中にネットワークが形成されていきます。インターネットを通じて個別に繋がりを模索することもできなくはないですが、世界中から人が集まる環境に身を置き、ともに実験・議論し、論文を出版する方が、より強い繋がりを効率的に構成できるのは明らかです。

 

4. 異文化の生活を経験することができる

海外の生活について、本やテレビ、インターネットの情報でなんとなく知っていることも多くあると思いますが、実際に海外に居住して経験することで気づくことも多くあります。例えば筆者は、信号が赤でも車は右折してよい、店にいくとHow are you?と会話を始める、等は知識として知っていましたが、実際に経験してみると、思っていたよりも危険に感じたりわずらわしく感じたりします。他にも、賃貸探しでは不動産会社などは殆ど使わず、掲示板等を通じて個々人で契約をするようなケースが殆どで、中間搾取的な構造があまりないことを実感できました。そうした小さな気づきが積もっていくと、文化圏によって理解の仕方、納得の仕方が違うことを改めて身を持って実感することができます。このような異文化の考え方を理解することは、論文を書く上でどのように要点をまとめれば査読者によい印象を与えるかを考える際にも、参考になる部分が多いと感じています。

 

5. 履歴書にかける

留学経験があることを自分の履歴書に書くと、以上のような経験をもった人材であると一発で認識してもらうことができます。そうすると書類選考においても、大体同じくらいの業績(論文数あるいは年齢、教育歴)を持った人物がを比べる際に、どちらかに留学経験があれば、基本的には留学経験がある方を選ぶでしょう。特に最近では留学をする日本人の数は減ってきているので(少子化で研究者あるいは博士号取得者の数自体も減ってますが)、留学経験は将来的に大きなアドバンテージになることが期待できます。

 

さいごに

以上のように実際に現地に赴き留学することは、令和の時代においてもまだまだ利点があります。研究留学に興味を持っている方は、まずはお試し気分で3ヶ月程度留学をしてみて、長く続けることにメリットを感じれば、さらに数年単位でやってみることをお勧めします。