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学会で発表賞を取る確率をあげるための5つのポイント

 

はじめに

学会は研究成果を発表する場であり、多くの研究者に自分の研究をアピールすることのできる絶好の機会である。最近では、若手に多くのチャンスを与えるという名目で、優れた発表に対して学会発表賞を与える学会も多くなっている。発表賞を取得することができれば、学振の申請書や履歴書にも記載することができるので、積極的に狙っていきたい。もちろん、普段からよい研究を行うことも大事ではあるが、大きな研究予算の獲得、就職活動の際の面接等においてはよい発表を行う技術も大切である。

筆者自身は学生時代に6回口頭発表賞に応募し、5件の発表賞を受賞してきた。勝率でいうと80%程度の確率である。他にも修士の卒業研究発表賞やその他学会のポスター賞も受賞したことがあるため、学会発表にはそこそこの自信がある。ここでは筆者が口頭発表の際に気をつけていた5つのポイントに関してお話ししたい。

 

前提として:一般的な良いプレゼンテーション

一般的な前提として、プレゼンテーション資料がよくまとまっていることは必須である。良い資料の作り方としては、適当に1、2冊デザインに関する本を買ってみて読めばよい。 例えば筆者は次の本を参考にしている。

 

 

但し、TED talkAppleのイベントのように洗練され過ぎたような資料では、審査員(おそらくは日本人の年配の研究者)には受けが悪い場合もあるので、やりすぎないように注意は必要であろう(国際学会でも自然科学基礎分野に限っては多少ごちゃごちゃした、データをある程度載せた資料の方が好まれやすい印象はある)。 

以上を踏まえた上で、学会発表賞を取得する確率をあげるための具体的なポイントについて解説する。

 

学会発表賞の具体的なポイント

1. 審査基準を知り、それを満たすことを意識する

学振の申請書を書くのと同じで、まずは審査基準を知ることが第一歩である。発表賞は他人との相対評価によって審査されることがほとんどで、なんとなくいい発表を目指すのと審査基準を的確に抑えた発表とでは、評価に大きな差が出てくるであろう。

とはいえ、学会発表賞の審査基準が公開されていない学会も多数あると思う。しかし、どの学会でも似たような審査基準になることが多いので、基準が公開されているような学会を参考にすれば良い。例えば

  • 研究の目的が明確であるか
  • 研究を遂行するための方法は具体的に示されているか
  • 研究内容は優れているか
  • 質疑応答が的確に行えていたか

等が審査基準になる。基本的には研究計画書や論文の審査基準と似ている。他にも、発表賞は若手を対象に審査が行われるケースがほとんどであるので、発表者に将来性を感じるかどうかも評価対象になる可能性がある。それらの基準を意識した資料を作ることが、良い評価を得ることの第一歩である。

 

2. 他人がまとめやすい要旨を作成する

学会にもよると思うが、審査員は応募者の発表の要約あるいは高評価の理由を作成しなければいけないケースがある。その際、学会要旨をほとんどそのままコピーアンドペーストできるような要旨を作成しておけば、審査員も手間を感じずに受賞理由を作成することができるため、よい印象を与えることができるだろう。 噂レベルはあるが、事前選考があるようなものでは、自分が筆頭著者の論文あるいは高いIFの論文を引用していた方が有利になる場合があるらしい。

 

3. これから何をしたいのかを常に明確にする

学者というのは自分の頭で考え理解したがる性質を持っている人が多い。そういった人たちを満足させることができれば、よい発表という印象を与えることができるだろう。そのためには、常にこれからなぜ何をしたいのかを明確にし続ける必要がある。具体的には、データをひたすら羅列するよりも、「これから〜を明らかにするために〜のデータについて議論します」と言ってからデータを見せる方が圧倒的に聞き手もわかりやすい。このように場面場面で納得できるような箇所を積み重ねると、良い発表という印象を持たれるだろう。

 

4. 原稿を遂行してある程度暗記する

「一流の発表はその場の雰囲気で話の内容を調整するから、原稿を覚える必要はない」という意見を聞いたことがあるが、発表賞を狙う際にはほとんど的外れであると思っている。 原稿を覚えずに「えー」や「あー」等を連発していると時間がもったいないというのは当然のことではあるが、原稿を遂行しておくことで限られた時間の中で最も効率よく相手に理解してもらえる伝え方を事前によく考えておくことができる。例えば、ロジックの展開の仕方も「A→B→C」か「B→A→C」がいいのかを検討することができる。他にも「示唆します」か「示しています」等の単語の選び方にも注意を払うことができる。

 

5. 質問を誘う

限られた発表時間の中では、自分の研究の背景、内容の全てを網羅的に話すことは大抵難しい。そういう場合でも「細かいことは省略しますが〜」等と議論を進めていき、大枠を伝える意識を持っていれば問題ない。むしろ、自分の研究をよく理解してくれている人がいるなら、その部分を質疑応答の時間に深堀ってくれるはずである。発表の中で聞かれそうな部分は予備スライドを用意し、ある程度論理を事前に整理しておくことで、うまく答えることができるだろう。そういったことを意図的に行うことができれば、質疑応答のポイントも高く評価されるに違いない。

 

さいごに

筆者はこれらのことを気をつけることによって、多数の学会発表賞を比較的高い勝率で受賞してきた。なんとなく良い発表を目指すのではなく、具体的にどういう部分に気をつけるのかを意識して、発表賞を獲得して欲しい。