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学振の研究遂行経費を申し込むメリットと具体的な内容

日本学術振興会特別研究員(DC)は、博士課程の学生が研究に専念するために、月20万円の研究奨励金を支給する制度である。しかしながら、この20万円は給与所得として課税対象となるため、この中から所得税や住民税を納め、さらには国民健康保険国民年金も支払う必要があり、実質的な手取りは15万円程度になる。ボーナスや家賃補助、交通費補助もない。とくに都会では家賃も高いので、一人暮らしをしているような学生であれば、ぎりぎりでやりくりすることになる人が多いのではないだろうか。

学振には研究遂行経費という制度がある。制度の内容としては、科研費以外で研究遂行に必要な出費が年間研究奨励金受給額の3割を上回ることが見込まれる場合(DCの場合年間72万円)、年度始めに申請を行うことで、その支出分を所得税・住民税の課税対象から除外することができる制度である。毎年支出内容の明細を提出する必要があるが、それを上回るメリットがあるので、迷っている人には是非申請してもらいたい。ここではそのメリットと具体的な経費の内訳を紹介する。 

 

 

メリット

税金が安くなる

72万円分を所得税・住民税の課税対象から除外することができる。具体的には、所得税10%住民税10%で計算すると、年間14.4万円の節税になる。学生にとってこれは大きい。

 

授業料免除を受けやすくなる

多くの大学で授業料免除は申請者の年間の給与所得で判定される。普通に学振を受給して独立生計として申請すると、年間所得は240万円として判定される。筆者は国立大学に通っていたが、これだと大体授業料半額免除になる。一方で、研究遂行経費を申請すると、所得額が240-72=168万円として判定されるため、授業料全額免除の対象になる可能性が高まる。実際に筆者は博士後期課程においいて5/6は授業料全額免除であった(なぜかD2後期は授業料半額免除だった)。

 

具体的な支出の内訳

実際の支出内訳

以下に筆者のD2の時に提出した内訳を示す。

  1. 学会関係経費         2万円
  2. 各種研究集会等への参加費   1万円
  3. 学術調査に係る経費     19万円
  4. 自宅での研究に必要な経費  50万円
  5. 所属・関連機関への交通費   0万円

具体的な内容は次の通り。

学会年会費

筆者の大学では学会の年会費を科研費で支払うことができないという妙なルールが存在していたため、自費で支払う必要があった。その分を研究遂行経費として計上していた。

出張旅費

近所の大学の共同研究者との打ち合わせなどの時に、科研費で足りない分は経費として計上していた。

通信費

具体的には自宅の光回線タブレットの通信費を計上していた。

パソコン代

筆者の研究室ではパソコンを自分で購入する必要があったため、Macbook proを研究室用に購入したりしていた。他にもiMacを自宅研究用に購入したり、iPadを購入したりした時に経費として計上していた。

書籍代

筆者は教科書を購入することが好きであったため、購入するたびに経費に計上していた。

交通費

筆者は大学近くに住んでいたので交通費はかからなかったが、電車で通う必要がある場合、交通費を研究遂行経費に計上することができる。ただしバイク通学等の場合のガソリン代は計上できないらしい。

 

72万円に届かなかった場合

研究遂行経費を申請して、研究奨励費の3割を上回る支出がなかった場合、ペナルティがあるのだろうか。基本的には、研究奨励費の3割に満たない分に対して追加徴税を行う必要があるが、それ以外は特に聞いたことはない。追加徴税といっても、もともと研究遂行経費の申請をしていなかった場合よりも税金は安くなるし、授業料免除の可能性も上がるので、とりあえず申請しておくことをお勧めする。